浅草寺(台東区)の雷門に新しい大提灯(ちょうちん)が2020/4/17日、新しくなって帰ってきました。
今年2020年は新型コロナウイルスの影響で浅草寺の観光客は激減していますが、久しぶりの明るいニュースに地元は盛り上がりを見せました。
浅草の街の人からは「いつも通りの光景に戻った」「久々の明るいニュースでうれしい」などと声が上がりました 。約一カ月ぶりの「浅草の顔」を一目見ようと、カメラ片手に駆けつける人もいました。
大提灯の取り付けを行ったのは、寺の御用出入(ごようでいり)の建設会社「新門」(台東区)の職人たちです。
17日午前6時半ごろから作業を始め、はしごなどを使って高さ約4、幅3.3m、重さ約700キロの大提灯を吊り下げました。約2時間後に作業は終わり、真っ赤な大提灯が仲見世に映えました。新調は7年ぶり。3月半ばに古いちょうちんが取り外されてから「不在」の状態でした。
約一カ月ぶりに戻ってきた大提灯に歓迎の声
約一カ月ぶりに戻ってきた大提灯に、街からは歓迎の声が相次いだ。
雷門から寺本堂に続く仲見世商店街で老舗菓子店を経営し、浅草観光連盟会長も務める冨士滋美さん(71)は「新型コロナが早く収束し、多くの人に新しいちょうちんを見に来てほしい」と語りました。
仲見世の豆店「豆舗(とうほ)梅林堂」店長の太田正登(まさと)さん(62)は「いつもの風景に戻った」と安どした様子。新型コロナウイルスの影響で人がまばらな仲見世ですが、「こういうことを一つ一つ積み重ねて、普段の生活に戻れれば」みんなの願いです。
新しい大提灯を見に訪れた近くの主婦(65)も「地元にとって久々の明るいニュース。やっぱり、大提灯があっての浅草だわ」と笑顔を見せた。
新門の杉林礼二郎専務は「一カ月、大提灯がなくて寂しかった人も多かったと思う。新しい大提灯がつり下がったことで、浅草やみんなの元気につながればいい」と話した。
大提灯の掛け替えは今回で6回目
浅草寺によると、大提灯の掛け替えは今回で6回目で、約7年ぶりの新調になるということです。取り外し作業は3月10日に実施し、約一カ月間、雷門には大提灯がなかった状態でした。
制作は京都の老舗「高橋提燈(ちょうちん)」が担い、福井県産の和紙やのり、絵の具などは特別な物を使用した。同社の担当者は「無事つり下がったと聞いて安心しました」と話しています。
同社が大提灯の制作を担当するのは1971年以降、6回目。今回は10人の職人が関わり、一昨年末~昨年1月、材料の丹波産の竹を準備することから始まりました。冬でないと、竹に虫が入ってしまうからだそうです。初代提灯から引き継がれている竜の彫刻は今回も再利用され、底部分に設置されています。
雷門の大提灯の歴史
浅草寺によると、雷門に大提灯が初めてつるされたのは1800年ごろというから、意外と歴史は浅いようです。門の工事に尽力した屋根職人らが奉納したとみられる。雷門自体は942(天慶5)年に駒形に建立したのが始まりで現在地に移ったのは鎌倉時代以降といいます。
雷門は江戸時代末期に焼失、以降は、アーチ状の門など仮設物が設置されていた時代もありましたが、1960年に松下電器産業(現パナソニック)創業者の故・松下幸之助さんの寄進でちょうちんとともに復活しました。
パナソニックといえば灯、灯といえば提灯ということでしょうか。
ちなみに提灯は奉納した町やグループの名を書くのが一般的。例えば、江戸時代の浮世絵師・歌川広重が描いた雷門の絵では、大提灯に「志ん橋」(新橋)と書かれているのですが、松下さんは企業名を書かなかったそうです。
新しい雷門の大提灯を希望の光に
制作した高橋提燈の社長は「新しい提灯をつるすことで少しでも明るい気持ちになっていただけたら」と願いを込めて語ったそうです。
出典:東京新聞